全うすること

宮澤賢治あるサラリーマンの生と死 (集英社新書 461F) (集英社新書)宮澤賢治あるサラリーマンの生と死 (集英社新書 461F) (集英社新書)
(2008/09/17)
佐藤 竜一

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新年早々に、主に宴席でお会いする知人に、是非おすすめ、とこの本を紹介された。
わたしの作品も熱心に観て下さっていて、宮沢賢治作品をテーマにしたものを
制作しているのなら、と紹介してくださったのだ。

この本では賢治の職歴という観点から、一生活者として、賢治の人物像を浮き彫りにしている。

岩手高等農林を卒業後、研究者、家業の手伝い、農業高校教師、農民芸術活動家、
を経て最後は砕石工場の技師兼営業マンとして働き、
それで力尽きるようにして37歳で亡くなる。

わたしは、羅須地人協会の活動も体を壊して挫折したのに、なぜ最晩年に
普通の健康体の人にとっても相当にハードと思われる仕事に就き
文字通り心血を注いだのか、以前から疑問に思っていた。

この本ではそこらへんの事情が、砕石工場の創業者との書簡を紹介しつつ
詳しく記されている。
ひとりの人間としてその生をいかに生きていくか。
その目標目的を明確にできたとしても
健康上のこと、理想と現実のギャップという壁が立ちはだかる。
それでも信念をつらぬきたいというすさまじい気力(確かになにかに没頭するという
集中力が、人並みはずれていたという天性のものもあったようだが)伝わってきて、
またこれから作品に接するときの姿勢が改まる思いがした。
↑では「気力」という表現をしたけれど。。。
読後、この本のことが頭から離れず、ずっと考えてしまっていた。。

全くの私見だけれど、賢治は一家の長男として生まれたのに家業は弟が継ぎ
そして父親に金銭的援助をずいぶん受けてきたということもあって
なんとかその恩義を返したい、あるいは自分の社会人としての力量を(親に)示したい、
ということもあったのかもしれない。
自分自身に対しては、それまでの活動は挫折に終わっているので、ここでひとつの
形を見たいという思いもあったと思う。

そして、文学で身を立てる夢は傍らに追いやって(いつ日の目を見るか分からないと悟って)
もうひとつの夢、--農民の中に入って豊かな農業を営む一助となること--へまい進したのは、
多分自分の持ち時間があまりないことをつねに意識していたからかもしれない。
自分と同じ病気で夭逝した最愛の妹の存在はきっといつも心の内にあったのだと思う。

そんなことをいろいろ考えていると、なんだか心が痛くなる思いになるとともに
わたしもその自分の持ち時間の中で、まじめに真摯に生きなければ。。と、
あらためて強く胸にせまってきた。

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